2010年5月5日水曜日

『愛しき者はすべて去りゆく』

 


『愛しき者はすべて去りゆく』

著者,デニス・レヘイン

出版社,角川書店








 映画『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(『GONE BABY GONE』)の原作となった小説。




 まったく知りませんでした。
「現代最高の私立探偵小説」であり、シリーズものでもあるということでした。





 『グッド・ウィル・ハンティング』(1997)




でマット・デイモンと共に脚本を書き、主演したベン・アフレック(なんと初脚本作品でアカデミーを獲っています)の初監督作品である映画『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を見て、ずいぶん深いところまで描いた映画だと思い(空撮で家並みを映していくところはオマージュでしょうか)、ならば原作はさらに深いところまで描いているんだろうか、と思い読みました。



 原作者は、デニス・レヘイン。




 聞いたことのなかった名前ですが、クリント・イーストウッド監督による映画『ミスティック・リバー』(2003)の原作者でもあるということです。



 

 さらには、映画『シャッター アイランド』(2009)の原作者としても知られています。




 
 
 そうか、「再生の見込み」なんてものが考えられないほどの深い喪失。それを描いている作家なんでしょうか。





 表紙裏に書いてある紹介文をそのまま書き写すと、

もはやボストンのこの界隈に、幼く無垢で無防備なものたちの居場所はない。ここは崩壊した家族、悪徳警官、詐欺師、そして、夜毎テレビで誘拐され た自分の娘について報じるニュースを観るアル中の母親が住む場所だ。少女が消えて80時間が経過し、捜査依頼を拒み続けていた私立探偵パトリックとアン ジーは遂に動き出す。しかしこの少女の捜索は、二人の愛、精神、そして生命までをも失う危険を孕んでいた―。
現代最高のディティクティブ・ノヴェル、シリーズ最新刊!


とあります。



 小説を読んでいて、ひっかかる描写、今の自分には到底描くことのできない箇所を見つけるとそれをメモする癖をつけています。



 今回とったメモの中からいくつか。


 わたしは生涯をとおしてこの女性を知っているが、目の前で泣くのを見たのは片手で数えられるほどだ。このとき、なにが彼女の涙をあふれさせたの か、完全には理解できなかった。今日酒場で遭遇したよりもはるかに恐ろしい状況に対峙し、それをやり過ごしてきたアンジーを、何度も見てきた―とはいえ、 原因がなんであれ、彼女の痛みは本物で、それを表わす彼女の顔を体に、わたしは耐えられなかった。



 彼らの死亡が確認されると、彼女は泣いた。
 いつも静かに、いつも閉めた扉の向こうで、いつも、わたしが家の遠いところにいて、聞こえないだろうと彼女が思っているときに。