2010年5月2日日曜日

『チョッパー・リード』




映画『チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼』(『CHOPPER』)
(2000)

監督,脚本,アンドリュー・ドミニク(Andrew Dominik 1967 - )

出演,エリック・バナ(Eric Bana 1968.08.09- )






 知る人ぞ知るオーストラリアの映画。
『ミュンヘン』(2005)、『きみがぼくを見つけた日』(2009)のエリック・バナの劇場映画デビュー出演作品。





 オーストラリアの犯罪史上、最も狂暴な男として知られたマーク“チョッパー”リード。彼のベストセラー自伝を基にこの映画は制作されました。







 

 ダニエル・デイ=ルイスが、自身の演技法について聞かれ、こう返している。

“もしある世界を想像しようとしたら、想像力を刺激できる手段はどんなものであれ全て使うだろう。それがメソッド・アクティング(自己の経験・感情を用いた写実的演技法)だよ”




 確かに、想像力を刺激できる手段はどんなものであれ全て使い、それを基にした演技によってアウトプットすることに究極の快楽を求めているのが俳優なのかもしれません。





 ブラッド・ピットの下に送られてくる何本もの脚本や映画。その中にこれがあったのだそうです。そして、これを見て「すげえや」ってことになったのだといいます。


 確かに「すげえ」んです。



 デ・ニーロ・アプローチと呼ばれる役に対してのアプローチ。
実話を基に作られる映画は特にそうなんですが、実在のその人に似た外見を持つ俳優が採用されることが多い。
 ロバート・デ・ニーロは自分がその人に似ていないときでも自らの外見をその人に極限まで似せていくというアプローチをとり高い評価を得ました。役柄の職業や環境を実際に体験したり、体重を極端に増減させたり、毛髪を抜いたり、歯を抜いたりといったものです。もちろん内面に対しても最大限のアプローチは為されます。自分が演じる役柄を研究し、知り尽くすことで一切の違和感を取り除く。ただの役柄という枠を越え、外見からも内面からも人物を立ち上がらせる。

 
 



 これをきっかけにブラッド・ピットはエリック・バナを『トロイ』(2004)に招き入れ、さらに自身が製作する『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007)の監督にアンドリュー・ドミニクを採用したことでこの『チョッパー・リード』は多くの人に知られるようになりました。






 オーストラリアの凶悪犯罪者マーク“チョッパー”リードのエピソードのひとつに、自分の意思で両耳を切り落とし、刑務所の移送を求めた、というのがあるのですが、以下は、そのマーク“チョッパー”リード本人(ごついだけでなくいかついおっさんです)に、耳を切り落とした時はどういう状況だったか、というのをエリック・バナが聞いている映像です。





 エリック・バナは、マーク・リードの話す姿を見ています。エピソードを話している彼を見て、仕草の一つ一つを自分に転送する。細かい癖、どこを強調しているか、そのどもり方、おどけた部分、身体を揺すって歩く姿、自分の役のためになる全てを取り込もうとしています。その結果があの演技なわけです。

<注:暴力・流血を含むシーンがあります>