『本当の戦争の話をしよう』
著者,ティム・オブライエン(Tim O'Brien 1946.10.01- )
訳者,村上春樹
出版社,文藝春秋
この本で初めてティム・オブライエンを知った。
ティム・オブライエンは、ベトナム戦争で実際に戦地に赴き、「戦争」を経験した。帰国後、戦争をテーマにした小説を書き続けている(というよりも書く内容がどうしても戦争のことについてになってしまう)。
ベトナム戦争、PTSD
こう知ってしまうと、すっと読むことが難しい。目の前に一つの大きく重そうな岩があって、それを動かさないことには先に進めそうにない。そういった感じがした。
だが読み終えて、初めに得た印象は間違いだったと気づく。すばらしい小説だった。形式は短篇小説集だが、ひとつひとつの短篇は(きっちりとではないが)それなりに連なったものである。
著者ティム・オブライエンについて
アメリカの五大湖の一つスペリオル湖とカナダ国境に接するミネソタ州に生まれる。23歳から24歳にかけて歩兵としてベトナム戦争(1960-1975)に従軍する。
帰国後、ハーバード大学大学院で政治学を学び、ワシントン・ポストでの勤務を経た1973年に処女作となる『僕が戦場で死んだら』を刊行、1979年には『カチアートを追跡して』で全米図書賞を受賞した。
-ティム・オブライエン - Wikipediaを参照しました
では、ティム・オブライエンは「戦争」を「書くこと」で自らを癒そうとしているのか。
その答えとなる文章が本著の中にあった。
私はものを書くことをセラピーであるとは思わなかったし、今でも思っていない。でもノーマン・バウカーの手紙を受け取ったとき私はこう思った。俺は文章を書いていたからこそあの記憶の渦の中を無事に通り抜けてくることができたんだな、と。もし文章を書いていなかったなら、私だってどうしていいかわからなくなっていたかもしれない。あるいはもっとひどいことになっていたかもしれない。でも物語を語ることによって、君は自分の経験を客観化できるのだ。君はその記憶を自分自身から分離することができるのだ。君はある真実をきっちりと固定し、それ以外のものを創作する。君はある場合には実際に起こった物事から書き始める。たとえば糞溜め野原の夜の出来事だ。そして君は実際には起こらなかったことを創作して、その話を書き進める。でもそれによって君は真実をより明確にし、わかりやすくすることができるのだ。-『本当の戦争の話をしよう』内『覚え書』より抜粋
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