2010年5月6日木曜日

『野いちご』






映画『野いちご』(『SMULTRONSTALLET』)
(1957)

監督,脚本,イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman 1918.07.14-2007.07.30)

出演,ヴィクトル・シェストレム(Victor Sjostrom 1879.09.20-1960.01.03)

イングリッド・チューリン(Ingrid Thulin 1926.01.27-2004.01.07)

ビビ・アンデショーン(Bibi Andersson 1935.11.11- )












 映画監督ウディ・アレン(Woody Allen)が、イングマール・ベルイマン監督作品の映画『野いちご』を推薦していました。

 ウディ・アレンが以前からベルイマンを推していたことは知ってましたが。











 初回、見ているときから「難解」という二文字が常に頭の中に。

見終えて  (むう)




ウェブでレビューを見ても“難解”というキーワードが。








 もう一度、始めから見返してみました。そうすると、思ったほど「難解」ではないことが分かります。














 あらすじみたいなものを簡潔に書きますと。

 
老医師イサク(ヴィクトル・シェストレム)は長年の功労が認められ、名誉博士号の授与が決まっていた。その当日の朝、イサクは自身が死ぬ夢を見て、目を覚ます。

 目を覚ました朝三時から、授与式が行われる夕方五時まで、イサクの身の上に起きた出来事をその夢と交えて進むロード・ムービー。



 1930年前後、映画が無声からトーキーに移行し、それから27年後にこれほど成熟した内容の映画を創れるものなのかと。しかもスウェーデンで。

 しかも、ベルイマン監督は当時39歳。主演のヴィクトル・シェストレムは当時78歳。脚本も書いたベルイマンにとっては老医師イサクも自身の分身であるとも言えます。







 予想もつかないような展開はないし、時制もひっくり返らない。登場人物もそう多くはない。しかもフィルムは白黒、主人公は老人。

大規模なエンターテイメント畑の収穫を見込んだマーケット・リサーチの結果に耳を傾けていれば、この映画は成立しなかったでしょう。



 淡々と流れる時間の中、一生を凝縮したような時間を老医師は過ごす。たったそれだけの映画。それなのに。








 監督自ら私的な体験を交えた脚本を書き、商業的成功からかけはなれているにもかかわらず成立し、作品の真価は時代を超え、多くの人々の心に残る。

 フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』やフランシス・フォード・コッポラの『コッポラの胡蝶の夢』と同じように。