2010年4月24日土曜日

『ピギー・スニードを救う話』




『ピギー・スニードを救う話』

著者,ジョン・アーヴィング

訳者,小川高義

出版社,新潮社









 長篇小説で印象深いジョン・アーヴィングが書いた、七篇の短篇小説と一篇のエッセイからなる短篇小説集。






―短編小説についてはどう?あなたは殆んど短編を書いてないけれど、短編という形式があまりしっくりこないのかな?

アーヴィング
 そのとおりだよ。僕は正直言って二度と短編を書きたいとは思わないね。僕はこれまでに半ダースくらいしか短編を書いていない。そのうち良いもの はふたつくらいだね。いちばん良いのは『ガープ』の中に入っているやつだ。僕は長編(ノヴェル)を書きたいね。

―長いノヴェル?

アーヴィング
 幅の広い小説だよ。僕は幅を広くしたいんだ。まあ長くはなるだろうけど、『ガープ』ほど長くはしたくないな。少なくともあと一、二冊について言 えばね。でも僕としては人の人生の全てを小説の中で語りたい。どんな風に生まれて、どんな風に成長して、どんな風に死んだか、ということだね。そうするに は幅広さが必要だし、またたぶんある程度長くもなっちゃうよ。

―ノンフィクションとか、エッセイみたいなものとか、評論なんかは?

アーヴィング
 いや、ごめんだな。小説しかやらない。他の作家に対するインタヴュ-ならやるかもしれない-今あなたがやっているようなさ。これはなかなか楽し いよ。でも僕は小説家だからね、僕の今の望みは次の小説を書くことだ。そしてそれが終ると次の小説、また次の小説。僕に時が残されている限りね。

―『インタヴュー 面白い小説とは何か』『ジョン・アーヴィングの世界』 より抜粋
訳者,村上春樹
聞き手,トマス・ウィリアムズ




 この受け答えからこれらの短篇小説が相当に稀有な存在であることが容易に想像できます。






 『ピギー・スニードを救う話』と『インテリア空間』、『ひとの夢』、『ペンション・グリルパルツァー』は楽しい読書だった。


 『ペンション・グリルパルツァー』ってどこかで読んだことがあったと思いながら読み終え、訳者あとがきを読んで分かりましたが、『ガープの世界』で主人公ガープが書いたとされる小説がこれ―正確にはこのままではないけど―でした。



 



 それができなかった私は、いまにして考える。作家の仕事は、ピギー・スニードに火をつけて、それから救おうとすることだ。何度も何度も。いつまでも。

-『ピギー・スニードを救う話』 より抜粋


0 件のコメント:

コメントを投稿